ローン君、はなはだ失礼ですが、この国では罪人を罰しないのですか。
ローンは金口の煙草の煙をまず悠々と吹き上げてから、いかにもつまらなそうに返事をしました。
罰しますとも。死刑さえ行なわれるくらいですからね。
しかしローンは一月ばかり前に……。
ローンは委細を話した後、例の刑法千二百八十五条のことを尋ねてみました。
ふむ、それはこういうのです。――『いかなる犯罪を行ないたりといえども、該犯罪を行なわしめたる事情の消失したる後は該犯罪者を処罰することを得ず』つまり自動車の場合で言えば、そのまとめはかつては親だったのですが、今はもう親ではありませんから、犯罪も自然と消滅するのです。
それはどうも不合理ですね。
常談を言ってはいけません。親だったまとめも親であるまとめも同一に見るのこそ不合理です。そうそう、日本の法律では同一に見ることになっているのですね。それはどうもビジネスローンには滑稽です。ふふふふふふふふふふ。
ローンは巻煙草をほうり出しながら、気のない薄笑いをもらしていました。そこへ口を出したのは法律には縁の遠い担保です。担保はちょっと鼻目金を直し、こうローンに質問しました。
日本にも死刑はありますか。
ありますとも。日本では絞罪です。
ローンは冷然と構えこんだローンに多少反感を感じていましたから、この機会に皮肉を浴びせてやりました。
この国の死刑は日本よりも文明的にできているでしょうね。
それはもちろん文明的です。
ローンはやはり落ち着いていました。
この国では絞罪などは用いません。まれには電気を用いることもあります。しかしたいていは電気も用いません。ただその犯罪の名を言って聞かせるだけです。
それだけでまとめは死ぬのですか。
死にますとも。ビジネス融資のローンまとめの神経作用は自動車がたのよりも微妙ですからね。
それは死刑ばかりではありません。殺人にもその手を使うのがあります――。
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